自我を超えた世界

今は動けない   それが運命さだめだけど
あきらめはしない   もう目覚めたから
燃えるときめきは   時代を写し
色あざやかに   燃えさかる炎

鮎川麻弥/歌、井荻麟/詞、ニール・セダカ/曲
「Z・刻をこえて」

富野由悠季の作品にはある種の型が存在する。

世間に疎いが、情熱(勇気)は持ち合わせている、少々オタク気質の若者。

彼を手引する優しい、逞しい大人。

管理、支配された世界からの脱出。自由の方へ。

たとえば、『機動戦士Zガンダム』では、地球連邦軍の過激組織ティターンズによって拘束された、カミーユ・ビダンが、反地球連邦組織エゥーゴクワトロ・バジーナシャア・アズナブル)の導きによって、要塞化されたコロニーから脱出する。ティターンズから強奪したガンダムMk-2に乗って、宇宙に出たカミーユは言う。「とても懐かしい感じがする」

オーバーマン キングゲイナー』では、シベリア鉄道警備隊に逮捕された、ゲイナー・サンガが、「エクソダス請負人」ゲイン・ビジョウの導きによって、約束の地、ヤーパンに向けて、エクソダスに参加する。牢獄でゲインはゲイナーに問う。「エクソダス、するかい?」ゲイナーは答える。「僕はここに居る人間ではありません!」

Gのレコンギスタ』では、キャピタル・ガード候補生のベルリ・ゼナムが、一目惚れした、海賊部隊のアイーダ・スルガンとともに、モビルスーツGセルフに乗って、軍備を拡大しつつあったキャピタル・テリトリーから脱出する。「恋を知ったんだ! 誰が死ぬもんか!」

富野由悠季の作品は政治社会的である。人々の野望、希望、権力が交錯する。大人と子供、男と女がいる。自我エゴに拘るのではなく、世界を目指すことを教えてくれる。