職務経歴書を見返していると、その頃、自分が何に苦しんでいたのかをまざまざと思い出す。トラウマは人間の苦痛や苦悩、あるいは恐怖が痼疾となって、現存在の思考と行動の障害になることであるが、してみると、人間は嬉しいこと、楽しいことよりも、辛いこと、苦しいことの方が、無意識のレベルで覚えているのではないだろうか。一見、快楽に引き寄せられているように見えても、実際は、苦痛と恐怖を回避しているに過ぎない。ホッブズは恐怖は人間の最大の情念であり、それを避けるために共通善(共同体)を建設すると主張したことは今では正しいと思える。それはネガティブな動機に見えるが、地上に生きる人間が自由を手に入れるための堂々たる方法なのだ。「嫌なことから逃げ出して何が悪いんだよ」碇シンジも言っているではないか。