「出戻り、おめでとう!」
遅番の仕事終わりに、宮崎さんと会社近くのコンビニで乾杯した。私はビール、宮崎さんは第三のビールを片手に、柿の種をおつまみにした。
「君のこと待っていたんだよ。訪問介護もやっているんだって。やっぱり、君はアグレッシブだな」宮崎さんは破顔の笑顔を見せて言った。「あと、ライターもやっています。今、山谷を取材しているんですよ。なかなか上手くいかないですけどね」私は駐車場のフェンスに腰かけて言った。私は体力に余裕があるとはいえ、お互い肉体労働の後で疲れていた。「あそこに坐ろうよ」宮崎さんはバックヤードの一角を指差して言った。「あそこが僕達の定位置じゃないか」
宮崎さんは夜勤以外のすべての勤務をこなす、私と同じ
私達の話題は自然と仕事の事、介護の事になった。「**に戻って来て驚きました。昔よりも露骨に虐待の噂を耳にします」早々私は穏やかならぬことを口にした。「私も一人で夜勤をしていたことがあるから分かります。夜、眠らない老人を何度もベッドに転がしました。悪いことをいっぱいしました。介護に限ったことではありません。前職の出版でもそうです。仕事をすればするほど罪を重ねる。私はそれに疲れてキリスト教徒になったんです。もう、みずから進んで悪を為す必要はないんです」宮崎さんのお父上は無教会派のキリスト教徒だと知っていたので、かなり踏み込んだことを話した。「昼間だと人(職員)が多いから、ぐっと我慢できるけど、夜になると寝不足で神経が苛立っているし危ないよな」宮崎さんは残り少なくなった缶ビールを飲み干して言った。「だからと言って、老人を敢えて殴る人の心理を私は理解しかねます。多分、その人は自分の
「宮崎さん、もう一杯やりましょうよ。次はもう少し明るい話をしませんか」私達は重い腰を上げると、ガラス越しに店内の蛍光灯に照らされながら、再びコンビニに足を運んだ。