BOOKMAN

TAKASHI KANEKO

モグリの医師

今、大塚愛の楽曲を集中的に聴いている。やはり、好きなのは「黒毛和牛上塩タン焼680円」で、これは平成版『ブラック・ジャック』のEDテーマに採用された。

だぁいすきよ もっと もっと わたしを愛して
だぁいすきよ あなたと一つになれるのなら
こんな幸せはないわ… お味はいかが?

完全にピノコの歌である。ピノコはブラック・ジャックの奥さん(おくたん)のことで、彼が卵巣奇形種の手術の際に摘出したヒトの組織を繋ぎ合わせて、一命を取り留めた少女のことである。最終話では大人の女性に成長したピノコはBJに切々と懇願する。「先生。私のこと、愛してください」「今更なにを言うんだ。ピノコは私の奥さんじゃないか」

こんなことを書いていると、BJはかなり危険な人物、危険な生活をしていると気づくが、さすがモグリの医師はひと味もふた味も違うな、と思わせる。

そうそう、ブラック・ジャックといえばパイプである。彼の余暇はパイプをくゆらし、沈思黙考することであった。折に触れてシガレットも吸ったが(勧められることが多かった)、基本的にはパイプ党であった1

今思えば、私がパイプを吸い始めたのは、BJの影響が大きい気がする。人が嗜好品に手を出す動機のひとつとして憧憬があるが、BJは私にとって、テレビ・アニメのスクリーンを通り越して、濃厚な実在リアリティを感じさせる人物だった。私も彼のようにモグリの文士になれないかしら、と思いながらパイプを吹かしているが、そのためにはまだまだ修業が必要である。


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  1. 「けむり屋日記」の記事「ブラックジャックとパイプ」を参考にした。