広告編集

「すると、文化面はこれでいいんだよ」中村は敦子から田川典子のほうに向きを変え、割付け用紙に赤鉛筆で斜めに線を引いた。「海鳥社のリルケ書簡集の広告が下にくるだろ? 沖村君が親父さんのコネで取ってきてくれたんだ」

「文化面は、記事とタイアップして広告が取れるわけね」

田川典子は敦子がそこにいるのを無視して、煙草を吸いながら、中村にそう言った。

辻邦生『雲の宴』

ブログの広告のレイアウトを大幅に変えた。今までページのフッタに雑然に押し込んでいた広告を、サイドバーのSponsored Linkに纏めたのだ。今回、広告のレイアウトを変更するにあたって、今まで放置していたサイドバーも刷新したから、だいぶ個人ブログらしくなった気がする。

しかし、課題がある。広告はパソコンの画面だと、トップページの右横に配置されるが、スマートフォンの画面だと、レイアウトの都合上、やはりページの下部に纏められてしまうのである。ふだんスマートフォンで記事を読まれている方は広告に注目する機会はほとんどないだろう。訴求効果はゼロに等しい。これは今後の課題である。

今まで『BOOKMAN』は広告に頓着してこなかった。まったく掲載しないか、掲載したとしてもページの下部に押し込んでいたのである。理由は簡単である。ほとんど収益にならないからである。しかし、広告をいっさい載せないというのも潔いかもしれないが、商売っ気がないというのも、それはそれで頽廃している気がする。私はライターとして金を稼ぐことに尽力すべきだ。

WEBの広告としては、Google AdSenseが最初の選択肢として挙げられるし、実際、多くの方が使われていると思うが、私はあえてアフェリエイトを選択した。Googleも審査が通ったのだが、広告を自由にレイアウトできない、なによりも広告の銘柄をGoogleに完全に一任することになるので、運用が難しく結局やめてしまった。「毛穴ゴッソリ」みたいな広告を『BOOKMAN』に掲載されても困るな、と思っていたのだ。

3年間、ブログを運営して分かったことは、ブログの著者は同時に編集者という事実である。彼/彼女の編集権は記事だけではない、広告にも及んでいる。どのような広告を掲載するかによって、その媒体の良識と品位が問われるし、それだけではない、広告を取捨選択するのもけっこう楽しい。今回、レイアウトを見直したことで、その事実に気づくことができたし、今後、私は編集権を手放すことはない、と堅く誓ったのだった。