BOOKMAN

TAKASHI KANEKO

SpeakEasy

自宅がサロンのようになっている。今年の初めの頃だろうか、会社の総合職を降りて、個人事業主として独立した頃から、友達が家に遊びに来ることが増えた。だいたい酒を飲んだり、煙草をくゆらせて過ごすのだが、冗談の中にも真面目な会話があり、その一瞬の啓示にハッとさせられることがある。酒場で飲めば数時間いるだけでそれなりの金額を取られるが、自宅で飲めば1200円のウイスキーを二人で割る計算である。それで朝まで居られるのだから、相当安上りである。特に冬は寒さのあまり、コンビニの前で一寸ちょっとイッパイということができないので、結局、暖房の効いた家に向かうことになる。最近はコタツを導入したので、そこを寝床にする奴もいる。酒場では憚れる会話も、自宅ならば許される。この愉しみを覚えると、外で飲食する機会は少なくなり、ますます家に引き籠るのは自然の流れである。わが家の誠命いましめはスピークイージーである。