今の職場を辞めることに決まって以来、私はたびたび自転車で通勤するようにしている。交通費は支給されているし、それゆえに本当は電車以外の方法で会社に通ってはいけないのだが、どうしたことか定期券を購入しておらず(やはり、今の職場を自身の仕事場として思うことができなかったのだろう)、その都度実費を払うのが嫌なので、半ばヤケクソで自転車で通勤しているのである。私の愛車はTREKのクロスバイクなので、それなりのスピードは出るが、通勤の時間帯は混むので、緩急をつけて漕いでいる。片道1時間。汗をかき、脚に程よい疲労を感じるので、職場に着いた時には一抹の達成感がある。今までは乗り継ぎの悪い電車に揺られて、歩道をとぼとぼ歩いていた頃は、職場の建物が目に入ると「うわぁ、またここに来てしまったのか」と絶望的な感情を抱いたものである。近代の福祉が建てた鉄の檻に進んで入り、むざむざ己の自由を放棄するのは、どこか喜劇的な光景である。
それはともかく、自転車通勤はまことに気持がいい。脚の筋肉は鍛えられるし、程よい有酸素運動なので、肺のガス交換が活発に行われる。全身が活性化する。ととのうのである。来月から職場が変わるので、自転車通勤は叶わなくなるが、この運動の習慣は続けたい。体と心に明らかに良い作用を及ぼしている。