BOOKMAN

TAKASHI KANEKO

実在と虚無

この世の虚無を感じて、心がざわざわしているが、そういう時はウイスキーでも飲みながら(パイプでも吹かしながら)、過ぎ去るのをじっと待つことである。

大切なことはこの世に永遠はないと感得しても、この世の虚無に引き込まれないことである。確かにこの世は永遠ではないが、「人間、死んだら終わり」という価値観は案外、間違っているのである。人間の愛の行為おこないはこの世に痕跡として確実に残るが、罪の行為おこないもその本質は虚無であり、愛の実在に及ぶべくもないが、この世に傷跡のように残るのである。だから、人間は己の人生と人格を大事にしなければならない。それが多少破綻していたとしても……。