BOOKMAN

Takashi Kaneko

靴を洗う

私は普段、革靴を履いているが、この頃は友達の影響や、足の健康を考えて、リラックスシーンでは、スニーカーを履きたいと思うようになった。今朝、早起きしたので、老人ホームの介護職をしていた時代に履いていたスニーカーを手洗いした。NIKEのクラシカルなバスケットボールシューズで、汚れを落として、紐を交換すれば、まだまだ履けると思ったからだ。

思えば介護職をしていた頃は、半年に1回、あるいは4ヶ月に1回の頻度で、職場用のスニーカーを買い替えたものだ。室内履きとしては大した頻度だと思う。コールに応じて、フロアを早足で歩き回ったり、身体の重い人をベッドから車椅子に移乗したり、今、省みれば、相当働いていた。建築現場で働いていた元同僚から見れば、介護現場の労働なんて、ナマヌルイものだと言っていたが、明け方、20人以上の離床介助を行う夜勤は、背中と腰に相当の負担が掛かるだろう。

たぶん、あんなに働くことは、今後の私の人生にはないだろう。あの労働に比べれば、業界新聞の記者の仕事は屁みたいなものだったし(大して頑張らなくても書けた)、飲食、特にバーテンダーの仕事は別の神経を必要とする。正直、私のキャリアに介護福祉は必要だったのか、と今でも疑問に思うが、懸命に働いて、くたびれた靴を洗っている時、けっして悪い気分ではなかったのは確かである。