この頃、森有正の著作を読み返しているが、彼が耽溺したリルケ以外にも、パスカルにぶつかったので、『パンセ』を読み始めた。同書は哲学、文学のみならず、神学にも影響を及ぼしているので、これを機に関心を少し神学に寄せてみようと思う。恩寵の概念について何かしら理解を得ることができると思う。
ライターの業務委託を積極的に引き受けず、普段は銀座のバーの箱の中に閉じ込められているので、生活が自閉的になっているが、それもまた善いと思う。自分の存在の様式の中で、自分の関心をどこまで温め、育てることができるか。そして、それを世界にいかにして表すことができるか。孤独かつ雪辱的な過程だが、この過程を踏まなければ、作家にはなれないだろう。大江健三郎はかつて、この過程を『「自分の木」の下で』と表現したと思う。