BOOKMAN

Takashi Kaneko

無頼派

わたしは太宰治はその無頼派的生の底で、きわめて宗教的な人間であったと思う。

小田垣雅也『現代のキリスト教』

太宰治は「小説家になりたいのですが、どのような本を読めばいいのでしょう?」と聞かれて、「聖書をお読みなさい」と即答したという。それで、私も文学の上達を図って、文語訳聖書を愛読するようになった。小説家あるいは文学者になれるかは依然心細いままであるが、思考の型、あるいは行動の型が徐々に太宰に似てきたと感じている。

太宰治の作品は、学生時代に『斜陽』『人間失格』その他短編を読んだくらいで、良い読者であったとは言えない。しかし、自分が洗礼を受け、聖書を枕頭の書とし、キリスト教文学の創作を志すようになると、無視できない作家に思えてきた。彼の無頼派的生活様式に共感する前に、太宰の身長175cmと当時にしては巨体で、よく食べ、よく飲み、よく笑ったことに惹かれたことが大きい。私も彼の人柄に惚れた人間の一人なのかもしれない。

とはいうものの、無頼派そのものへの共感も大きい。10年前、坂口安吾を夢中で読んでいた時にその準備はできていたし(当時は躁鬱病の症状が悪化の一途を辿っていた)、無頼派のアブノーマルな行動の裏に見せる、人生に対する真面目な態度に感銘を受けてきた。彼等は芸術ことに文学に対する病気と宗教の関係を大胆に暴いてくれる、私の仕事と人生の先達であるのだ。

太宰治。バー ルパンにて