BOOKMAN

Takashi Kaneko

人生に無駄なものはない

昔、学生の頃は1日くらい徹夜をしても大丈夫だったけど、アラフォーになると、翌日に寝ても、体調が全然回復しないことに気づく。30代半ばに私は介護職として働いていたけど、40〜60代の同僚も夜勤をこなしていた。省みれば、彼/彼女たちは体力の限界の中で、働いていたのではないか。今、私が夜勤をやるように申し付けられても、「無理です」としか言いようがない。随分、体力が落ちて、軟弱になったものだ。

昨夜はバーの仕事を終えた後、小岩の居酒屋 ほろよいで、一杯だけ飲んで帰った。身体が疲れすぎていて、少しアルコールを入れないと帰れなかったのだ。「また、よろしくお願いします」店長、店員の方の御心に、私のごとき卑小な人物が記憶されているのが有り難かった。

しかし、40手前にして、文筆業のかたわら、水商売を副業にしたのは、経済的に失敗だった。酒場バーの仕事が終わったら、ついつい飲みに行ってしまう。収入よりも出費の方が多いのである。酒を飲むことで結ばれた交友関係は確実にあるし(そのうち一人は今では親友である)、酒場で働くことで、洋酒の知識、カクテルの技術、会話のリズムは磨かれた感がある。しかし、その結果(因果)として、経済的に破滅したら元も子もないだろう。地獄が口を開けて私を待っている。私は神の助けを得て、その運命から逃れなければならない。

酒場に勤めている間、私はまともな作品ひとつ完成させることができなかった。その点、文学的にも失敗だったと言いたくなるが、酒場で身につけた人間観察の眼差し、酔漢を手懐け、あしらう接遇の巧みは、今後、文学のみならず、宗教でも役に立つかもしれない。人間は成功もするし失敗もする。しかし、どちらに転んでも、人生で無駄なものなど何ひとつとしてないのだ。