2026年3月24日をもって、バーテンダーを引退した。2024年12月にアルバイトとして始めた仕事は、約1年4ヶ月続いたことになる。アルバイトとはいえ、私は生まれたからには、一度はバーテンダーの仕事に就きたかったので、今回、その本望を実現したことになる。
バーテンダーとしてカウンターに立つ前に、私はもともと洋酒と酒場が好きだったが、その知識と経験は一般的な消費者の範疇を超えることはなかった。ウイスキーは国産の安価なブレンデッドのみで、シングルモルトは全然飲んだことがなかった。——いや、そのような些末なことではなくて、価値の生産・提供者して、対面で接客しつつ、お客様に楽しんで頂くために努力するのは、初めての経験だった。
今回、バーテンダーとして働いたことで、洋酒を扱うための知識・経験は格段に上達したはずである。また、接客のための敬語・英語もそれなり上手く扱えるようになった。酒場で働くことで得たものは多いが、同時に失ったものも多い。人はどのような職業を選ぶとも、トレードオフの法則を免れることはできない。この場で逐一、記すことはしないが、代償の一つとして健康が挙げられる。バーテンダーはやはり、寿命が短い傾向にある。
実際に水商売に従事してみて、私はバビロンの河のように、世過ぎ身過ぎで流れ去るものでなく、神の言葉のごとく、永遠なるものを希求している事実をハッキリ理解した。私のこの理解はパスカルの影響を受けているが、酒場でもお客さんが来ない時、哲学的な思索に耽ることがあるのである。私たちが地上で行う仕事の目的の一つは金を得ることにあるが、多分、最終的な目的はそこにはないのである。