令和ノ疫 葛飾篇

蟄居

五日目の流行病はやりやまいの癒ゆる頃パイプ煙草をひそと吸いにき

東京に大きわざわい来し春に友と向かいてパフェを食いたり

かの夜に我と病を得し君の電話の声は余所者よそものの声

都庁より送り届きし食料うちさぽは戦時に於ける配給に似て

三箱の一ツは天然水ミネラルウォーターよ 蛇口の水で我は生き継ぐ

保健所の安否確認いまだなく父母は電話で我を励ます

各々おのおのの十字架負いし人々とZoomで話す 人間を見ゆ

病床の孤独の夜々を経る我も類稀たぐいまれなるうつくしみ得る