BOOKMAN

TAKASHI KANEKO

Entries from 2022-07-01 to 1 month

惜別

7月29日をもって、私は松戸の有料老人ホームの勤務1を終えた。8月2日からは伊興の特別養護老人ホーム2に勤務することになる。退職ではなく、異動である。後者は私が介護の「か」の字も分からない、新入職員の頃から勤めていた施設である。つまり、古巣に出戻…

点と線

東京の下層社会 (ちくま学芸文庫)作者:紀田 順一郎筑摩書房Amazon 紀田順一郎『東京の下層社会』。山谷のルポの下調べのために読んだが、あまり役に立たなかった。本書のタイトルは、横山源之助『日本の下層社会』のオマージュだが、横山氏のそれに比べれば…

ネットワーク

聖餐式ミサの後、足早に教会を立ち去ろうとする私の肩を、神学生の染谷さんが掴んで言った。 「ちょっと、ちょっと。兼子さん、行かないでくださいよ。最近、どうです?」 「すみません、市川聖マリヤ教会にはお世話になっていますけど、やっぱり、私、洗礼…

2022年前期の総括

春学期から参加していた立教大学の浪岡ゼミが一昨日、最終回を迎えたので、この半年間の自分の成長を総括したい。 自分の書きたいテーマ、研究テーマを決めて、取材に行けるようになったこと。 短歌を再開したこと。 案外、こんなものか。まだまだ全然ライタ…

魂の平和

この頃、思わぬ時に内省したり、あるいはただボンヤリ時を過ごしたりしてしまって、身辺雑事が手に着かなくなってしまっている。 生来、神経症に苦しめられていた中村真一郎は、自分の人生の目標は魂の平和を得ることだ、と折に触れて語っていたが、彼はその…

政治学 vs 社会学

山谷のルポルタージュのタイトルが決まる。『山谷の宗教社会:キリスト教徒の炊き出しの論理』。この作品は私の初めての社会学的研究になるだろう。ちなみに、大学院生の頃に書いた『青踏』の論文は文学研究だった(そう思うと、私は政治学の研究を一度もし…

天皇制の憂鬱

私は護憲派ではない。日本国憲法の第9条は改正して、自衛隊は戦力として認めるべきだと思うし、そもそも第1条の天皇制は廃止して、日本は共和制に移行すべきだと思っている。 しかし、こんな政治的志向を持つ人間は、現代の日本において容易に受け容れられな…

私の仕舞支度

8月1日をもって、私は千葉県松戸市の有料老人ホームから、足立区伊興の特別養護老人ホームに異動する。読者諸氏はお分かりだと思うが、1年数ヶ月前に私は真逆のことを書いている。体よく言えば元の鞘に収まるということだが、その間、訪問介護を始めたりなど…

韻文と散文 歌人と文人

今日は短歌を何首かリライトした。単語を切ったり貼ったり、入れ替えたりすることで、ようやく自分が納得できる一首ができるのが短歌の魅力だ。これは散文にはない、韻文だけに許された楽しみで、小説や随筆の推敲の仕方とは全然違うだろう。散文は「ええい…

情報活動

勤務先の職場でホール業務をしていると、普段、何かと気にかけてくださる看護師の方が、新聞記事の切り抜きスクラップを手渡してくれた。 www.asahi.com 「介護ライターって、あなたのことじゃないの。兼子くんも早く立派になって、こういう所に書けるといい…

ルビぞ愛しき

西行花伝 (新潮文庫)作者:邦生, 辻新潮社Amazon 辻邦生という小説家がいる。私はこの人から文体について多くのことを学んだ。特に彼のルビ遊びはおそらく文学史上類を見ないものである。『西行花伝』では、森羅万象いきとしいけるもの、実在感たしかさのよう…

地獄の一丁目を歩く

「俳句を詠むためには地獄を通過しなければならない」誰かが語った言葉だが、俳句を素人としてではなく、玄人として極めようとすると、その先には魔道が潜んでいるらしい。この感覚は私のようなアマチュアの権化のように見られている人間でもそこはかとなく…

自転車野郎

TREK FX1 休日、自転車のタイヤに空気を入れ、フレームを磨き、ギアに油を差し、サドルの高さを調整した。この車種はTREK FX1というやつで、私が小岩に引っ越してきた頃に購入したから、かれこれ6年くらい乗っているけれども、修理に継ぐ修理を施して、今で…

和食と洋酒

大人、あるいは中年、と言うべきだろうか。ともかくその年代になってから、食は和食、酒は洋酒と好みが決まるようになった。洋酒が好きなのはハイカラ趣味などではなく(もちろん、その要素も否定できないが)、洋酒は酒徒のすべての需要をカバーできる所に…