BOOKMAN

TAKASHI KANEKO

Entries from 2022-02-01 to 1 month

Three rounds in Tokyo

29歳の時に東京に移住してきたので、6年が経つ。 大都会は誘惑が多いので、その分、躓き、気落ちすることも多いけど、まだ東京と自己に絶望しないで、この街に踏み留まろうと思う。 私の東京生活には三つの周回ラウンドが存在する。 1回戦 出版社に勤めてい…

編集と台所

外回りから戻った私は自分の席に着いて、床に荷物を降ろした。 「どう? 成果はあった?」古希に差しかかった老媼の編集長が訊いた。 「いえ、一件も取れませんでした」私が苦しげに答える。自転車で営業してきたからだ。 「そんなんじゃ、新聞でなくなっち…

「おおっ」文学者

宗教に関心がなければいけないのか (ちくま新書)作者:小谷野 敦筑摩書房Amazon 小谷野敦は私の読書の先生である。もちろん、勝手に私淑しているだけで、直接的な師弟関係はないのだが、彼の著書で紹介されている本をひも解いて、「おおっ」と膝を叩いた経験…

隅田川右岸

グラスに大ぶりに盛られたイチゴ・パフェを、三好くんは携帯電話で撮影した。 食事のために給された料理を撮影するなど、はしたない行為だと思っている私は、彼の行為を訝しみつつ眺めた。食事の前に手を合わせることぐらいできないのだろうか。フランスに留…

令和ノ疫 葛飾篇

蟄居 五日目の流行病はやりやまいの癒ゆる頃パイプ煙草をひそと吸いにき 東京に大き禍わざわい来し春に友と向かいてパフェを食いたり かの夜に我と病を得し君の電話の声は余所者よそものの声 都庁より送り届きし食料うちさぽは戦時に於ける配給に似て 三箱の…

街角の歌声

友がみな我よりえらく見える日は作者:上原隆幻冬舎Amazon 心配ないからね 君の想いが 誰かにとどく 明日がきっとある どんなに困難で くじけそうでも 信じることを 決してやめないで KAN「愛は勝つ」 上原隆の名前を知ったのは、肥沼和之『フリーライターと…

食卓の闘争

昔は何を食べても、何を飲んでも、頑丈な胃袋で、そのおかげでここまで立派な体躯に成長した。「君は食うのも、飲むのも、両方イケる口だからな」と、二十代半ばに勤めた出版社の社長に言われた。「鎌倉文士は手酌主義だ」白樺派の嫡流を自認する、その社長…

CITY WRITER

バーテンさん www.youtube.com ワンフィンガーで飲やるもよし。ツーフィンガーで飲やるもよし1。 村松友視が1987年に出演したサントリーのCMの宣伝文コピーである。このCMにはいくつかのヴァリエーションがあって、割烹、屋台、バーを舞台にしているが、ここ…

白色確定申告の苦しみ

今年の1月4日に文士ライターとして開業してから、もうすぐ1ヶ月がたつ。個人事業主フリーランスになってやるべきことは何か? そう、確定申告。そのために帳簿をつけることである。一口に確定申告と言っても、青色と白色があるが、私は後者を選択した。言わ…