Entries from 2020-01-01 to 1 year

枕博士

学生の頃は酒を飲まなくても、いくらでも眠ることができた。当時はまだ実家暮らしで、親父は酒癖が悪く、酒乱であったので、私はむしろ酒を嫌悪していたのだ。私はいつも珈琲を飲んでいた。私は珈琲を飲みながら、読書し、議論した。友達と酒を飲んだ後も、…

Bar Unchained

新小岩のBar Unchainedのマスターが亡くなった。死因は肺癌。病名が発覚して8日後のことであった。 今日、新小岩で精神科を受診したついでに、同店でイッパイやろうとしたが、開店の18時を過ぎてもシャッターが閉まっていたので、向かいのBar TAKE FIVEのマ…

人種、民族、階級、宗教、性別が違っても、人間は分かり合えるというのが文学の立場だ。開高健は小説やルポルタージュを書くことで、個人と個人の間に存在する壁、社会と社会の間に存在する壁を突破しようとしたのではないか。

駅のホームにて

昔、一緒に仕事をした人と駅のホームで際会した気がした。——「街はふるさと」。

知的ディレッタント

私は文士ライターという職業を自分の天職だと思っている。文学、法学、政治学、数学、物理学、生物学……すべての学問を渉猟することができる。私にはその才能がある。たとえ、知的ディレッタントに過ぎないと言われても。

チンピラと貴婦人

テキーラを水割りにするとおいしい。今まではチンピラが飲む、粗野な酒のように思っていたが、こうして飲むと、貴婦人のようではないか。

酒器

ウイスキーを水割りにして飲むことを覚えたら、銘柄の選択肢がぐっと拡がった。ワイングラスに注いで、水を加えると、香りがいっそう引き立つ。酒の楽しみには酒器の選択が欠かせないのだ。少しだけ、上品な酒飲みになった気がした。

温かいもの

北千住のバーテンダーに「眠れないのですが」と相談したら、「温かいものを飲むと眠れますよ」と教えてくれた。長年続けている、寝る前に酒を飲むのは間違った習慣だったのかもしれない。温かい緑茶、または珈琲を試してみよう。

Political Writer

川越 高校生の頃、私は軍人か政治家になりたかった。司馬遼太郎『坂の上の雲』の秋山兄弟、『竜馬がゆく』の維新志士達に憧れていた。戦後は、日本国憲法・第66条に「内閣総理大臣その他の国務大臣は、文民でなければならない」と規定されているから、現役の…

追い水

久しぶりに、追い水チェイサーと交互にウイスキーをストレートで飲やる。これだよ。これ。

開高健のスピリッツ

帰宅早々、ウイスキーを水割りにして飲む。比率は《ウイスキー:1 水:2.5》。アルコール度数は10%くらいだろうか。ウイスキーの銘柄は角。割水は南アルプスの天然水。どちらもサントリーの主力商品だ。飲み友達に、「私はサントリー宣伝部に洗脳されている…

句読点の冒険

句読点の打ち方について悩み続けている。次の例文を読んでほしい。 「深い孤独の中の死」アマルティア・センはデリーの演説でその不幸について語った。 例文1 「深い孤独の中の死」。アマルティア・センはデリーの演説でその不幸について語った。 例文2 深い…

熱くて冷たい

先日、後輩と酒を飲んでいると、「兼子さんは温かい」と言われた。嬉しい言葉だ。私は単に冷たい人間ではなかったのだ。——熱くて冷たい、善と悪、天国と地獄、両方を知る人間。片手落ちはいけない。

Brass 24周年記念

黄昏時、東武伊勢崎線・竹ノ塚駅で同僚と分かれると、中目黒ゆきに乗った。車内で読みさしの本、中村真一郎『魂の暴力』を開く。経済学者の「僕」、日本人とフランス人の混血児「パリの女」、幼児期の性暴力が原因で記憶を失くした「ジャンヌ」の三角関係が…

数奇人の微笑

私は1日にだいたい3本~5本の煙草を吸う。「それなら吸わない方がいいじゃないか」と、煙草を覚えた頃に同僚に言われたことがあるが、私は精神衛生上、何か効果があると期待して煙草を吸うのである。「煙草は百害あって一利なし」と嫌煙家は喧伝するが、これ…

東京の中を歩く

先週、思うところがあって、東京の中を散歩した。中なかという言葉は、東京のタクシー運転手の俗語で、中央区、千代田区、港区のことを指す。一番、タクシーの乗降率が高い、商売上、重要な地域なのだろう。そこが新宿区ではない所がおもしろい(数年前、葛…

酒断ちぬ

昨夜は酒を一滴も飲まずに、抗精神病薬のジプレキサ(2.5mg)を飲んで眠った。睡眠時間は8時間くらいだろうか。久しぶりに深く、長く眠った。快眠だった。 この頃は不眠が続いていた。老人ホームの労働はシフト制なので、早番、遅番、夜勤など、勤務時間はて…

割り切れないもの

宮本輝の名を知ったのはいつだろう? たしか新所沢の今はなき、Cafe Omberの「文学カフェ」で同席した御婦人に教えてもらったような気がする。彼女は長年のファンであり、パニック障害など、さまざまな困難を克服した宮本輝を賞賛していたのだが、あれから5…

冴羽獠、走る!

鞄の中にいつも『CITY HUNTER』を忍ばせて、折に触れて読んでいる。 私の持っている版エディションは集英社の文庫版(A6判)ではなくて、ゼノンコミックス(作者の北条司が経営する出版社)のB6判。カバーと扉に描きおろしの画稿が使われていて、ファンはも…

恩寵の政治学

トーマス・マンの作品は、学生時代に読んで以来、折に触れて読み返している。当時、私は政治学を専攻していたが、マンの作品は、政治学、文学などの専門を越えて、幅広い読みができるのでお気に入りだった。彼の小説、論文、講演は、政治学の一流のテキスト…

自我を超えた世界

今は動けない それが運命さだめだけど あきらめはしない もう目覚めたから 燃えるときめきは 時代を写し 色あざやかに 燃えさかる炎 鮎川麻弥/歌、井荻麟/詞、ニール・セダカ/曲「Z・刻をこえて」 富野由悠季の作品にはある種の型が存在する。 世間に疎い…

維持療法

一時期、頓服にしていた抗精神病薬のジプレキサ(オランザピン)を、今週は毎日、眠前に飲んでいる。1T 2.5mgである。躁鬱病の治療としては容量が少ないから、一応、寛解し、予防のための維持療法に移ったと言うべきだろう。以前、症状のひどい時はジプレキ…

執念と諦念

夜勤明け。特に辛いことがあった訳ではないのに、酒を飲まずにはいられなくなる。おそらく、酒を飲むことで、自身の心と体に溜まった澱のような疲労を洗い流したいのだろう。 まずはビールで喉をしめらす。冷蔵庫にキリン・一番搾りが冷えている。もちろん、…

ハリー・ハラーの秘薬

12時間くらい眠った。 昨夜は寝しなにビールを1本(500ml)、ウイスキーを2ショット、それと抗精神病薬のジプレキサ(2.5mg)を1錠飲んだ。普通、酒と薬の飲み合わせは禁忌なのだが、度が過ぎなければ、という条件つきで、ほとんどの薬剤師と精神科医が暗に…

失われた感覚を求めて

私が高校生の頃、父が会社で払い下げになったパソコンを自宅に持ち帰ってきた。IBMのThinkpadだ。Windows98がインストールされていた(ヴィーンチャラランという起動音は今でも最高にクールだと思う)。そのパソコンを私は大学4年生(2009年)まで使っていた…

サイレースを飲んでいた頃

眠りたくても眠れない——。執拗な不眠症の症状に苦しめられたのはいつだろうか? 25歳の頃のことだ。当時、取引のあった広告代理店から無理な要求があって、急遽、新聞に出稿する広告版下を、私が作らなければならなくなった。前日、徹夜していたにも関わらず…

郊外生活者

夜の勤めを終えると 僕は朝日を浴びて 駅に向かう 丁寧に髭を剃り 髪を几帳面に梳かした 自転車を漕ぐ勤め人 糊のきいたシャツに袖を通し 顔に薄くクリームを塗った 女子高生 徹夜の労働で 汗と脂にまみれて 眠たい目をこすり 腹を空かせて 重い足どりで歩く…

東欧巡礼

中村真一郎は大学でフランス文学を講じていたにも関わらず、外国に行くのが遅かった。彼が初めて外国を、憧れのヨーロッパの地を踏んだのは50を過ぎていたと思う。その原因は青春期は日本が軍国主義と戦争で、出征する以外に海外に行くことができなかったし…

対岸の灯

昨日は小雨が降っていたが、このまま家に居るのは嫌だったので、日没後、小岩駅に向かい、葛西臨海公園行きのバスに飛び乗った。 コロナ禍以後、バスに乗るのは初めてだが、当然、すべての乗客にマスクの着用を義務づけていた。マスクを付けていない人には運…

缶詰生活

最近は雨が続くから、あるいは単に遊ぶ金が尽きたのか、家にいる日が多い。"Stay home"あるいは"Go to travel"とは関係ない。私は命令されると逆のことをしたくなる質たちの人間である(そもそも非常事態とはいえ、人々はなぜ平然とこのような恣意的な命令に…