BOOKMAN

TAKASHI KANEKO

Entries from 2022-11-01 to 1 month

わたくし事として

わたくし事で恐縮だが、明日12月1日付で、私は職場を異動することになる。会社はまるで腫物に触るように私をたらい回しにしているし、結局は年度末に辞めてしまうのだけれども、ここではその話は繰り返さない。ただひとつ言えることは、介護はけっして誰でも…

泥濘を歩く

なにか面白いことはないか? ——石川啄木 毎日、短歌を1首書いている。これは小説が思うように書けないから、多分、その代償に違いないが、それでも構わないと思っている。近頃、内容としても、形式としても、スカスカな散文を書いているので、それを稠密な韻…

ウイスキーのお別れ

昨日、職場の同僚の板橋さんが、私が来月異動するので、餞別としてウイスキーをくれた。昨日が一緒に働く最後の勤務だったのだ。 ウイスキーの銘柄はTINCUP。アメリカン・ウイスキーで、コルクの栓にフタをする形で、鉄製のカップが付いている。心身の調子が…

三会の辞

週に1、2回会う音楽家と協議して、互いに短歌と歌詞を持ち寄り、批評し合う会を発足した。その名は《三会》である。私たちが行きつけにしている、バー 二階アップステアーズにあやかり、私たちが昇ることができる架空の階段があると見て名づけた。批評会と研…

歌壇復帰

昨日、ブログに上げた連作「湯浴」は、職場の落語好きの年輩の同僚との競作の賜物である。 正直、自分でも驚いている。文語がごく自然に扱えるようになっている。半年間、文語訳『聖書』を読み続けた成果だが、自分の文体として結実しているとは思わなかった…

湯浴

バスタブに深く身体を沈ませて咽び泣きたる夜もありしや 数滴のシャボンをタオルで泡立てて我が身の錆を洗い落せり 追い炊きに男子おのこの頬は朱け染めて父の御前で数を数えき 乳房より流るる湯をば堰き止めて君を背なから抱きしめており

傷ましき腕

岡本太郎「傷ましき腕」 表題は戦中、岡本太郎が二科展に出したデビュー作から借りた。 昨日、音楽家の友達と炬燵を囲みながら話していて、「ロックの定義は何だ」ということになった。私はしばし思いを巡らして、「傷ついていること」と答えた。文学者の私…

時には葡萄酒を

今年、健康診断を受けていないから、自分の身体がどうなっているのか分からないけれども、このごろ酒を飲み過ぎていると思う。時間なんて関係ない、機会があれば飲んでしまうし、その種類もビール、ワイン、ウイスキーなど、洋酒であれば何でもいけるのでケ…

広告編集

「すると、文化面はこれでいいんだよ」中村は敦子から田川典子のほうに向きを変え、割付け用紙に赤鉛筆で斜めに線を引いた。「海鳥社のリルケ書簡集の広告が下にくるだろ? 沖村君が親父さんのコネで取ってきてくれたんだ」 「文化面は、記事とタイアップし…

事物と思想

大学生の頃、指導教員の先生に突きつけられた言葉がある。 「あなたは理論が好きなんです」 先生は檄して、感情を顕わにして言われたが、10年以上たった今でも鮮明に覚えている。それは後の人生で、先生以外の人々にも繰り返し言われてきたからだ。 思想(理…

モグリの医師

ブラック・ジャック 21 ブラック・ジャック (少年チャンピオン・コミックス)作者:手塚治虫手塚プロダクションAmazon 今、大塚愛の楽曲を集中的に聴いている。やはり、好きなのは「黒毛和牛上塩タン焼680円」で、これは平成版『ブラック・ジャック』のEDテー…

悪徳と悲惨と恍惚と

小説を一本書いているが、思うように筆が進まない。たぶん、集中力が足りないのである。先日、友達に「考えがとっちらかっている」と指摘されたが、そのとおりだと思う。考えがまとまらないのだ。精神的に障害を抱えていて、薬を飲んでいる以上、体調の良し…

本業と副業

10月の給与が振り込まれた。手取18万円也。週5日フルタイムで働いてこの程度なのだから、もう見切りをつけるしかない。「ライターの仕事が軌道に乗るまで、うちで働ければいいじゃないですか」と同僚は言ってくれるが、数年間この生活を続けていれば、生計は…

垂直と水平

大将と和解した。酒の力も借りて、わだかまりが解けたような気がする。キリストはみずからを通じて、人に神と和解することを説いたが、人はまず神と和解する前にみずからの隣人となりびとと和解しなければならないのではないか。否、まず神が先だろう。人は…

嗜好品

早番の勤務が終わると、私は休憩室にいる直属の上司Iさんに声をかけた。 「手巻煙草、試してみませんか? 見た目はぶかっこうですが、一本一本、私が手で巻いてきたんです」 「いいよ、一本ちょうだい」 私達はオフィスからベランダに出た。喫煙所になってい…

選ばれし人

情熱冷めやらず。昨夜遅くまで、ファミリーマート西小岩店の軒先で、音楽家と学生、そして異邦人ことくにびとと飲みかつ話した。3時間ほど眠ったあと、顔を洗い、髪を整えて、池袋の立教学院諸聖徒礼拝堂(立教大学チャペル)に出かける。 聖餐式が終わった…

Book of Days

冷静と情熱のあいだ竹野内豊Amazon 昨夜はエンヤの"Book of Days"を肴にしてウイスキーを飲んでいた。同曲は映画『冷静と情熱のあいだ』の主題歌(挿入歌)で、公開当初からずっと気になっていたけど、題名が判らなかった。今回、Amazon Musicで掴んだ形だ。…

力と愛

もっと本を読まなければ、と思う。『聖書』は大事だが、それだけでは創作を支えきれない。観念は重要だが、文学とくに小説は具体的に叙述しなければならない。 研究者と作家。その相違について、本格的に書いてみたいが、まだ機は熟していないようだ。しかし…

荒野の試み

12月1日付で異動することが決まった。役員は環境を変えて、私の勤労意欲を高めようとしているらしいが、課長は知っている。もはや、私を止めることはできない、と。実際は来年度の新卒入社まで頭数を揃えたいんだと思う。会社の懐柔策にまんまと乗ってしまっ…

LondonDryGin

ひと仕事終えて、手持無沙汰にしている私に、H女史はタイピングの手を休めて言った。「そういえば、兼子さんって、何歳でしたっけ?」 「35、今年36歳です。Hさんはたしか……32歳ですよね。2年前の夜勤中に30歳の誕生日を迎えたことを覚えていましたから」 「…

芸術と涜神

小説を書いている。今は大量に書いて、このブログにも習作をばんばんアップしなければならないが、やはり、虚構フィクションを捏造するというのは、精神に独特の負荷がかかるらしく、小説だけでは毎日更新ができないのが現状である。 作家クリエーターとその…

RoutineWork

年末調整をしなければならない。しかし、いっこうにやる気が起きなかったので、ビールを飲みながら片づけた。こんな調子では年度末の確定申告が思いやられる。個人事業主としては完全に赤字である。収入のほとんどを給与所得に頼っている。最近、酒に頼りす…

ブログで稼ぐ

ブログに再び広告を掲載した。フッタにまとめて並べているので、そこを参照されたし。 広告は以前も貼り付けていたのだが、Amazonアソシエイト以外は1円にもならないので、やめてしまった。私が今までブログで稼いだのは、100円未満のほんの雀の涙である。現…

Love and Truth

昨夜、酒場で上司が指摘した、私がかまってちゃんである、という事実について、少し考えてみたい。 かまってちゃんは人からちやほやされたい。私を見てほしい、聞いてほしい、話しかけてほしい、という欲求がある。要するに特別扱いしてほしいのである。ただ…

雌伏と至福

昨夜、竹ノ塚のバーで、上司としこたま飲んだ。 11歳年下の上司なのだが、彼女によると、私は「かまってちゃん」らしい。昨夜も「飲みに行くか」と、彼女の方から声を掛けてくれて、意気投合した。「金づるゲットー!」と冗談交じりに言っていたが、そこは「…

ショートスリーパーの苦悩

すがすがしい朝。ウイスキーを飲む。会社の仕事は午後から始まるので、それまでに醒めていればいい、という計算である。 最近は抗精神病薬 アリピプラゾールが身体に馴染んできたのか、コンスタントに5時間くらい眠れるようになった。それでもやはり、長く眠…

鼓動

トントン。トントン。 嗜眠から醒めつつあるとき、誰かがドアを敲く音がする。 トントン。トントン。「……いるか?」 どうやら話しかけられているらしい。しかし、意識が回復しないので、うまく応えることができない。 トントン。トントン。「佐藤、いるか? …

科学から空想へ

今、私の居間兼寝室には、二人の酔漢が寝息をたてて眠っている。こう書くと、さまざまな方面で、心配されたり、呆れられたりするだろうが、私の実生活というのは案外単純なものである。会社に勤めたり、酒場で過ごしたり、下宿で友達と酒杯を片手に芸術論を…