傷ましき腕

岡本太郎「傷ましき腕」

表題は戦中、岡本太郎が二科展に出したデビュー作から借りた。

昨日、音楽家の友達と炬燵を囲みながら話していて、「ロックの定義は何だ」ということになった。私はしばし思いを巡らして、「傷ついていること」と答えた。文学者の私も、音楽家の彼も、現代日本社会の中で深く傷ついているのだ。

私が思うところによると、ロックは私達の血みどろの傷口に気休めの軟膏を塗布したりはしない。ロックは私達に傷口は傷跡として遺すことを要求する。ロックは私達に安易な慰めを与えたりはしない。ロックは私達に現実に傷つきながらも再び立ち上がるように鼓舞する。これらを鑑みると、ロックはやはり、世界の諸悪と闘う人の為の歌、カミュの言う『反抗的人間』の為の歌なのだ。「われ抗う、ゆえにわれ在り」

私がロッカーの彼を惹きつけるのは、私にどこかレジスタンスの雰囲気があるからだろう。そういえば、昔お世話になった出版社の社長が言っていた。「小説家は血を流していますよ」

惨澹たる夜が明けると、私達はシケモクを揉み消して言った。「そう簡単にらせるものか」