和食と洋酒

大人、あるいは中年、と言うべきだろうか。ともかくその年代になってから、食は和食、酒は洋酒と好みが決まるようになった。洋酒が好きなのはハイカラ趣味などではなく(もちろん、その要素も否定できないが)、洋酒は酒徒のすべての需要をカバーできる所に理由がある。お腹がすいた時、栄養を摂りたい時はビールを飲むし、ビタミン、ポリフェノールなどの抗酸化物質を摂りたい時はワインを飲む。そして、不安と恐怖を鎮めて眠りに就きたい時はジンないしウィスキーをストレートで飲む。アルコールの種類と効能でいえば、洋酒の右に出るものはない。イギリス、大英帝国は料理にあまり手間暇を掛けなかったけれど(その代わりフィッシュ・アンド・チップスなど簡便なスナックが美味しく楽しい)、酒については探求を惜しむことがなかった。複数のボタニカルを調合した薬酒 ジンと、樽の中で何年、何十年と寝かせた古酒 ウイスキーは英国の偉大なる発明である。

私は洋酒を賛美して止むことを知らないが、食は和食を好む。しかも、蕎麦、麦とろ飯、醤油拉麺(支那蕎麦と書くと怒られるのだろうか)など、あっさりした、濃い味付けのものを好む。完全に酒飲み御用達の食事である。味が濃い方が好みなのは、肉体労働に従事しているせいであるが、アルコールで失った塩分を補うためでもある。小説の神様 志賀直哉は関西に比べて、関東の濃い味付けは「活動する人」の味と言った。よく食べ、よく飲み、よく働く。私もそんな人になりたい。

と、そんなことを、夏バテに苦しんで、食欲の湧かない夜に思ったのでした。