BOOKMAN

TAKASHI KANEKO

功利主義的選択

夜勤明け1日目

不眠、抑鬱、胃弱……その他、名状すべからざる不快な症状が続くので、今月末まで禁酒することにした。そして、その代りに抗精神病薬を規則正しく飲むことに決めた。

私が酒を飲む理由のひとつに「今日も眠れないのではないか」という恐怖があるが、そもそも酒は眠るための飲み物としては神経を覚醒、興奮させるので、甚だ不適切であり、早朝、寝不足、宿酔に苦しみながら、駅まで徒歩20分掛けるのが苦痛に思えてきた。しかも胃はムカムカ、腸はグルグルして、たえず下痢の不安と闘わなければならない。酒を飲む快楽よりも、不快の方が増大してきたので禁酒する——。極めて功利主義的な選択である。

現在、午後5時半。黄昏たそがれに飲むウイスキーは最高に美味だと想像しながら、私は甘いミルク・コーヒーを啜るのだった。