曲芸師

昨夜は酒を一滴も飲まずに寝た。熟睡、安眠した訳ではなく、明け方までだらだらと惰眠を貪っていたが、疲れは取れ、前向きな気持ちで仕事と生活に向き合える気がする。実際、さっき近くの自動販売機でジュースを買ってきたが、身体が軽いのである。

こうして、1週間のうちに徐々に休肝日を増やしていきたい。ただし其の間、煙草は好きなだけ吸っても良いことにする。珈琲や紅茶を片手にぷかぷかする。それで読書が捗るのだから、いい暮らしをしていると思う。煙草は身体に悪いじゃないか、と公衆の皆様は思われるかもしれないが、今の私にとって酒の方がはるかに身体に悪いのである。煙草を吸うことで、アル中を防げれば安いものである。毒を以って毒を制すとは、このようなことを言うのである。

先日、教会の人と酒席で話している時、カトリックの神父のアルコール依存症が話題になった。カトリックでは聖職者の妻帯が許されていないから、その代償としてアルコールに走ってしまうという。かくいう私たちアングリカンも大酒飲みが多い。プロテスタントは禁酒禁煙を誇るが、猥雑な人生を送る私にはちと厳しいものがある。他宗派を蔑する気は毛頭ないが、右でも左でもない中道ヴィア・メディアを目指すのが私の生き方らしい。それはけっして中途半端な道ではない。高度な平衡感覚を要する曲芸師の業なのだ。

パブロ・ピカソ「曲芸師たち」