BOOKMAN

TAKASHI KANEKO

シオンの女

腰が痛い。言葉ではいくら福祉と介護を蔑していても、実際に職場に来れば真面目に働くものだ。ただし、労働が激しい分、罪深さと虚しさが残る。潮時に変わりはない。

昨夜、シオンのむすめが来た。このむすめという言葉は便利で、むすめよりもう少しニュアンスに広がりのある言葉だ。おみなというたおやかな響きもいい。

お互い夕食は食べていたので、酒を嗜む。梅酒、葡萄酒、フレバード・ワインを少々。ウイスキーはやらなかった。彼女は煙草を吸わないので、私も吸わない。微酔より程よく酩酊して、気持よく眠ることができた。

アルコール依存症は孤独の病だ。患者はアルコールに対する嗜癖性を当然もっているが、彼の実存は孤立した状況に置かれている。彼は己の孤独に傷つき、倦んでいるのだ。しかして、アルコール依存症の治療には服薬し、規則正しい生活習慣を身に着けることに加えて、彼の孤立的状況を少しでも解消する必要がある。

シオンのむすめ——彼女は医者でも看護婦でもないが、彼女の存在は私にとって、慰謝そのものである。天然の妙薬のごとし。最低週1回の処方が望ましい。