爽やかな解毒剤

すべてを理解することは、すべてを赦すことである。

——レフ・トルストイ『戦争と平和』

ピート・ハミル『ブルックリン物語』の感銘が大きい。本作の最大のテーマは父との確執である。主人公はもともと父と喧嘩していた訳ではないが、酒飲みの父親をどこか憎んでいた。少年は酒を飲み、父と語らうことによって、父を理解し、父と和解した。それは少年が大人の男に成長する過程だったのだ。

これがハードボイルド・ロマンだと思った。ハードボイルドを描くのに、銃器や薬物など小道具を使う必要はないと、ハミルに諭された感じた。

この頃、私は神学の勉強を始めているが、これに夢中になると、現実リアリティを喪失する可能性がある。文学を読むことで、具体的で地に足が着いた思考と認識ができるようになる。文学は神学、哲学に対する最良の解毒剤なのである。

小説家ライター新聞記者ジャーナリストの彼に自分を重ねている所もある。新聞記者の後は小説家になる。キャリアとして悪くないだろう。