個人事業主 T.K.

今日、葛飾税務署に開業届を提出した。

書類は国税庁のウェブサイトで編集できるので、パソコンで各項目に記入し、印刷して完成。印鑑も自筆のサインも必要ない、意外に簡単に書けてしまった。内容は次のとおり。

  • 職業:文士
  • 事業の概要:文筆業。書籍、雑誌、新聞、ブログ等の執筆。

税務署の窓口の担当の方に、「文士ライターです」と話したら、すぐに納得してくれた。仕事がシンプルだからだろう。それなら、最初から「文士」などという昭和の万年床の臭気が漂う、古めかしい言葉ではなく、当世風に「ライター」と表記すればいいじゃないか、と思われるが、私は「文士」という言葉に、Writer、Journalist、Documentalist、Novelistなどの幅広い意味を込めている。私はこの言葉に自身を託しているのである。

今から5年前、30歳になったばかりの頃の私は個人事業主になろうとしたが、結局、それは叶わなかった。当時はアベノミクスで景気はよかったが1、東京の陋屋に住んでいた私は「社会」と言われる現代の茫漠たる荒野に怯えていた。それに加えて、物心ついた頃から苦しめられてきた躁鬱は、敏感さ、感じやすさ、気分の浮き沈みを通り越して、宿痾になりつつあった。私は自身の人生の処理の仕方が分からなかったのである。

あれから5年がたつ。私はいまだに世間知らずだが、多少不如意な生活を送ることで、かえって自身の趣味、嗜好、関心が分かるようになった。近頃の私はモノにこだわらない、気持のさっぱりした人間と見られているが、本当の私は人一倍(あるいはそれ以上に)モノに依存している、モノに執着している人間なのだ。世間にどう見られようとも、私は自身の志向に正直になりたいと思った。それが今回、開業届を出した次第である。


  1. 実態はどうであれ、失業率は低かった。