BOOKMAN

TAKASHI KANEKO

因果な商売

昔、ミニコミ紙の記者をやっていた時、還暦を過ぎた同僚がふと漏らした一言がある。

「因果な商売だな」

記事を書くことは、人々の感情と利害が複雑に絡み合った過程を認識する作業である。その点、やはり、記者ジャーナリストは政治的な職業なのだろう。

しかし、私が昔携わっていた介護に比べて、新聞は人間としての業の深さに一歩及ばないような気がする。私は介護に手を染めたことで、人間の善悪とエゴの表出を目の当たりにした。

私は今後、新聞と文学で、人間の業を背負い、それをつまびらかにする、そういう仕事をするべきなのだろう。