最年少

私は36歳。もう立派な中年である。しかし、新しい職場では最年少である。

新聞社、出版社に入ると、いつもこのような現象が起きる。よほどこの業界は高齢化が進んでいるのだろうか。確かに編集者、記者というものはある程度経験を積んだ人、場数を踏んだ人でないと務まらないのかもしれない。とはいえ、新しい仕事を始める時は、誰でも初心者である。昔と違って業界全体に、新人を育てようという気運が乏しいのではないか。多少の過ちをカヴァーする体力が無くなっているのではないか。今の若者にとって、システムエンジニア、プログラマーの方が魅力的な職業として映るのだろう。

介護の現場で働いていた時、20代のキャッキャした若い子と、老体に鞭打ってヒイヒイ働く60代の職員に別れていたことに気づく。年齢層において、U字カーブの現象が起きている。言い換えると、30代、40代の幹部の担い手がいないのである。この年齢層は結婚、出産、育児などのライフイベントが重なるので、必死になって働く。会社もそれを承知の上で無理をさせる。その構図が介護現場では希薄だった。ある意味ではノンビリした職場だった。

私のようにヨリ高い年収と技術を求めて、転職する中年男性は少なくないのだろう。実際、物書きにとって、老人ホームの現場労働は待遇が良くない。学者と作家はそういうふうに考える。彼等は自分の仕事を豊かにするために、自身の所属先を選択する。個人と社会の相互作用によって、文化は作られるのだ。