BOOKMAN

TAKASHI KANEKO

通勤電車

バーテンダーに転身しようか、そんなことを不意に満員電車の中で思ったが、思い過ごしということにして、意識の深層に押し込めた。介護福祉の記者は一見地味だが、私はけっして嫌いではない。4年間現場で働いていたから、私なりの課題があるし、何よりも介護というのは活字に移しても、喜怒哀楽の感情を含む、人間的な仕事なのだ。そこら辺のビジネス、テクノロジーの記者では得がたい充実感がこの業界にあると私は見ている。ゆえにフリーライターに転身した後でも、私は介護について書くだろう。必ずしも善いことばかりではないし、むしろ、その執筆の動機は怒りである。記事であろうと、文学であろうと、私は絶対に美談は書かないと決めている。

新聞の後はWEBで書こうと思うが、そこで私の知識、経験が生かせるかは微妙である。こうして、私は毎日、WEBに書き立てているし、その点慣れているが、印刷・DTPのキャリアもそれなりにある。介護そのものよりも有ると言っていいくらいだ。私がジャーナリストを続ける理由は、メディアに携わることによって、人間と邂逅し、関係が構築されるだけでなく、仕事そのものが楽だからだ。もちろん、忙しい時はあるし、修羅場はあるが、現場で介護をする苦痛と苦労に比べれば、本当に何でもないのである。