BOOKMAN

TAKASHI KANEKO

電通クオリティ

ああ、肩と首が痛い。前後左右に思うように曲がらない。原因はいろいろ考えられる。5年ぶりにスーツを着る、それもネクタイを締めるので、身体が仕立てに合っていないのだ。それと、1日8時間以上、椅子に坐って、モニターを凝視しながらタイピングするのにまだ身体が慣れていないのかもしれない。椅子の坐り方とか他にもいろいろあるんだろうな。ピアノ用の椅子を使用している自宅ではそんなに疲れないもの。

私は医者に掛かるのが嫌いだが、週末は接骨院で鍼を打ってもらう必要があるかもしれない。仕事を変えたことで、出費が増えたけど、その分、失意に沈んで、あるいは絶望に駆られて、悪場所で放蕩しないで済む。

しかし、勤務時間が10時から18時半に固定されたのはいい。ようやく生活リズムが整えられた感じだ。朝、起きて、夜、寝る。じつに自然だ。今までのシフト勤務は持病の躁鬱病を馴致する妨げになっていた。夜勤は論外である。

新聞記事の文体にまだ慣れていない。一般の人が読んで分かりやすいことはもちろんだが、硬質なのにふくらみのある、柔らかい文体が求められる。矛盾した要素である。編集長に原稿を直されて、なるほど、と思った。言葉を血肉にするためには、とにかく、読んで書き続けるしかないのだ。

しかし、今省みれば、新卒で執筆編集していたミニコミ紙は、記事の文章の質はともかく、デザインに関してはかなり高度な仕事をしていたと思う。今はDTPオペレーターに丸投げだが、自分で級数表とカラーチャートを見ながら、その都度指定していた。本当はそういうことも含めて、編集なんだけどね。ただ原稿を書けばいい訳ではないのだ。そのミニコミ紙の発行者は元漫画家で、その後、電通にデザイナーとして勤務していた。最近、世間ではいろいろ言われているが、さすが電通クオリティだと思わずにはいられない、緻密な仕事だった。