空虚感の正体

「今、何の仕事をしているの?」と訊かれたら、私はためらうことなく、文筆家ライターではなく、編集記者ジャーナリストと答えるだろう。原稿を書けば足れり、というような仕事ではない。執筆のスキルは重要であるし、核であるが、それ以上に編集のスキルとセンスが問われる。しかし、その代わり、記事の文章は読みやすければ平凡でよく、ライターのように強靭な個性を求められることはない。ジャーナリストと聞くと探偵ないし政治家に準じた職業のように思われるかもしれないが(その見方は必ずしも間違いではないが)、実際は芸術家ではなく職人である。

ジャーナリストとして仕事を初めてまだ6ヶ月しか経たないから、失敗や逡巡、挫折があるのは当然である。私の内面的な気質は、社会的な視野が要求されるこの職業にあまり向いていないと思うが、編集が楽しいので何とか続けている感じである。

一方、ライターは極めて個人的ないし個性的な職業である。私はこの英語に「文学者」あるいは「小説家」という訳語を当てている。出版業界の一般的な通念に反しているが、彼等は職人ではなく作家である。

私は去年までライター志望として活動していたが、今は完全に休止している。ライターとしての私は完全に死んでいると言ってもいい。それがこの空虚感の正体である。来年は小説の執筆を再開したい。