他流試合

10月22日、女優の松岡みどりさんに連れられて、巣鴨聖泉キリスト教会の主日礼拝に参列した。松岡さんとは取材先で知り合い、お互いにクリスチャンであることを確認すると、「ぜひ、私たちの教会に遊びに来て」とお誘いを受けたのだ。

巣鴨聖泉キリスト教会はプロテスタント・メソジストの教会。聖公会の立教学院諸聖徒礼拝堂に教籍を置く私にとって、プロテスタントの教会を訪れるのは初めての経験だ。巣鴨聖泉教会の建築はコンクリートの打ちっぱなしだが、草花が多いので、無機質な雰囲気ではない。巣鴨の街並に良く馴染んでいる。ただし、礼拝堂(こう言ってもいいのだろうか)に入ると、その簡素なことに驚いた。椅子が並んでいて(机はない)、一角にはオルガンではなく、グランドピアノが置かれている。説教台は会衆席と同じ高さだったと記憶している。

牧師の小嶋崇先生は背広にネクタイ。僧服をまとい、クリスチャン・カラーを着用している聖公会の牧師に比べて、かなり簡素な格好だ。

讃美歌を歌い、説教を聞いたあと、ニケヤ信経(たぶん、メソジストではこのように表現しない)を唱える。しかし、何かが足りない。そうだ、「キリエ」だ。

Kyrie eleison; Christe eleison; Kyrie eleison.
主よ憐みください キリストよ憐みください 主よ憐みください

当日は、感染対策のため、聖餐(こう言ってもいいのだろうか)がなかった。パンと葡萄酒ください。

礼拝後、小嶋崇牧師と歓談。小嶋先生は立教大学の出身で、卒業後、お父さんの牧師業を手伝いながら、アメリカのメソジストの神学校に進学して、教えを学んだ。己がクリスチャンになって分かったことだが、立教大学は本当に多くのキリスト者を輩出していることが分かる。私もその中に連なると思うと嬉しい。

小嶋先生からは山の手のプロテスタントの運動を聞いた。「駒込に内村鑑三の流れを汲む、聖書伝習所があります。プロテスタントの気質があれば、一度、そこを訪ねてみてはいかがでしょうか」そして、続けて言った。「伝道師になりたいんですか。大変な道だと思いますよ」

その後は松岡さんと、巣鴨の珈琲伯爵で一喫。「真ちゃん」こと、文学者 中村真一郎の思い出を語り合った。あっと言う間に3時間が過ぎた。松岡さんは今度、お手製の葡萄酒を振る舞ってくれるとのこと。巣鴨の教会の人々は酒も煙草もやらない。礼拝では葡萄酒ではなく、葡萄ジュースを用いるらしい。「えー、君たち酒やらないの?」私は驚嘆して答えた。

私は今後もカトリックとプロテスタントが交差するアングリカンの教会に身を置き続けるだろう。しかし、定期的に他流試合の機会を持ちたい。「北辰一刀流、千葉周作!」ならぬ「聖公会、兼子崇志!」と。

巣鴨聖泉教会