BOOKMAN

TAKASHI KANEKO

燃えつき症候群

昔、ハローワークの職業訓練で、介護初任者研修を受講したとき、講義の最初の方で印象に残ったことがある。

燃えつき症候群——。医療職、福祉職に多いとされる。感情労働がメインのやりがいのある仕事を身を粉にして、延々と取り組んだ結果、当人が燃え尽きたように一気にやる気をなくしてしまうというのである。一種の鬱病に似た症状かと思われるが、私の場合はやりがいのない仕事を(身を粉にしたかは別にして)4年間延々と続けてきたのだから、より病根は深いと言える。親の介護をする前に、もう一生分の介護をしてしまった気がする。

この頃、介護について悪しざまに書いているが、そもそもの原因は私の人生に対する態度が曖昧なことに由来するのだろう。優柔不断なのだ。介護について学びがあったのが、最初の3年間で、その頃はそれなりに苦労もしたし、刺激も受けたような気がする。しかし、非常勤に降りてから今に至るまでの1年間は完全に惰性、蛇足で、仕事に慣れているが故の緊張感のなさが私を堕落させたのだろう。『機動戦士Zガンダム』が名作なのに対し、続篇の『機動戦士ガンダムZZ』が凡作なのはその辺の事情による。コロナ禍とはいえ、どうして私は1年前に介護の仕事を綺麗サッパリ辞めなかったのだろう。己の過去の経歴に縛られていたのかもしれないが、それよりも己の仕事、己の生活を刷新する勇気と体力がなかったのではないか。今はその用意ができている。要するに、機が熟していなかったのである。当時の私は介護に絶望していると同時に、まだ一縷の希望を持っていた。