文筆と活動

以前、勤めていた所のお客さんから手紙をもらった。異動する時の去り際に、私から手紙を寄せて、だいぶ日にちが経つので、もはや返事は期待していなかったのだが、昨夜、郵便受けを開けてみると、一通の葉書が入っていたので、望外の喜びである。

昔、出版社で編集者として働いていた頃は、手紙を書くことは重要な業務のひとつだったし、短歌の結社に所属していた頃は、同人たちと手紙のやりとりをして、互いに慰め合い、励まし合ったものだった。

私たちは知っているのです。苦難は忍耐を、忍耐は練達を、練達からは希望が生まれるということを1

その後、活字とは関わりのない仕事に就いてからは(同時に短歌の結社も辞めてしまった)、手紙を書くことはめっきり減った。以後、私は文盲になった。会社には勤めていたが、社会的には死んでいたに等しい。手紙は活動のバロメーターである。文筆と活動は車の両輪のようなもので、どちらが欠けても目的に辿り着くことはできない。本来、言葉ことば行為おこないは一つである。

ようやく、動き始めた。

生き始めた。


  1. 「ローマ人への手紙」。