BOOKMAN

TAKASHI KANEKO

介護福祉士

日本介護福祉士会30周年記念を取材した。新橋と台場の間、竹芝のホテルの会場を借り切って行われたのだが、来賓も錚々たる顔ぶれで、介護業界の繋がりの深さが感じられた。

日本作業療法士協会 山本伸一会長に「兼子さんは介護福祉士だよね。30周年記念は感慨深いものがあるんじゃない?」と声を掛けてくれたが、正直、私の内心は複雑である。

「今でも時々現場に戻りたい時がありますけどね。お客さんがいて、ようやく仕事ができますし、彼等から力を貰いますから」

「私も今は会長をやっていますが、今でも月2回、現場に診療に行くんですよ。でも、兼子さんの今の仕事も必要とされていますよ」

山本さんは私の肩をぽんぽんと軽くたたくと、再びパーティーの席に着いた。それは牧師の仕草そのものだった。マザー・テレサは人と接する時、「話せ。(名前を)呼べ。触れ」と言ったそうである。一流の作業療法士も同じ姿勢だと気づいた。

福祉・介護に対する私の態度は複雑である。先の発言に反しているが、私は正直、現場に戻りたくない。いや、戻るべきではないのかもしれない。このまま執筆・編集・伝道の道を歩み続けるべきだろう。しかし、時に現場で働いている人々と共に苦しみ、共に喜び、彼等の声を聴かなければならない。介護福祉の専門新聞社を離れても、私は介護福祉について書き続けるだろう。私は文学者として、現場で働く彼等から情熱を貰うのだ。