病中の天職

内村鑑三について論じるには、私はまだ勉強が足りない。彼の無教会主義は信条的、学問的に反発を覚えるが、この立場を理解し、克服するに至っていない。文士ジャーナリストとしての彼の生き方を尊敬するが、その文体は冗長で、著者自身の意図せざる美文である(福沢諭吉の方が遥かに簡潔で読みやすい)。しかし、それでも寸鉄のように心に突き刺さる一文がある。

汝神を有すまた何をか要せん。

不治の病怖るるに足らず、回復の望なお存するあり、これに耐ゆるなぐさめと快楽あり、生命いのちに勝る宝と希望のぞみとを汝の有するあり、また病中の天職あるあり、汝は絶望すべきにあらざるなり1


  1. 内村鑑三『基督信徒のなぐさめ』岩波書店岩波文庫、1939年、101頁。強調は筆者による。