現場要請

昨日、訪問介護を一件終えたあと、携帯電話を見ると、兼務先の老人ホームから着信があった。折り返し掛け直すと、総務部の方が出て、現場の介護部の上司に繋いでくれた。

「休日なのに折り返し電話をくれてありがとう。シフトで相談したいことがあるんだ。兼子さんは今月はすべて日勤(9時~18時)だけど、20日以降、早番(7時~16時)と遅番(13時~22時)に対応してくれるかな? 異動したばかりだけど、もうぜんぜん動けるからさ。そうしてもらえると、ホント助かる」

私は二つ返事で快諾した。早番勤務と遅番勤務にはそれぞれ500円と1000円の手当が付くが、そんなのは実際どうでもよくて、新しい職場の上司に頼りにされているのが、私は素直に嬉しかった。人間の動機を金銭ないし利益に還元する行動科学は完全に間違っていると分かった瞬間だった。近世においては、主体的に動く、積極的に動くことが兎角善しとされているが、それだけで世間は通用しない。受け身になった時、受動的になった時、どう動くか、どのように呼応するかが、人間としての力量が試されているのではないか。ギリシア語の情熱パトスの語源は受苦だと聞いたことがある。苦しみを受け入れること。情熱が始まるのはそれからだ。