BOOKMAN

TAKASHI KANEKO

言葉に仕える

「やっぱり、明るくなったよ」

ビールで喉を湿らせている私を見て、居酒屋の店主がふと、煙草を燻らせながら言った。

自分の実感だけでなく、他人にそう言われると、やはり、真実味がある。あかしという言葉の意味がなんとなく分かるような気がする。人は真実を自ら主張することはできない。他の人、第三者の証言が必要なのである。『福音書』はそういう書物だ。

転職したこと。洗礼を受けたこと。この二つの出来事がほとんど同時に起こったことが、自分の中で転回点ターニングポイントになっている。「言葉に仕える」。私の仕事と人生はこの一事に尽きる。

取材用のカメラとICレコーダーを買った。ようやくライターらしくなってきた。