BOOKMAN

TAKASHI KANEKO

午睡

浅眠、不眠が続き、また、夜勤前なので午睡をとることにした。14時までに洗濯、夕食の準備を終えると、布団を敷き、鎧戸を閉じる。抗精神病薬のクエチアピン(セロクエル)を飲んだが、目が冴えて、なかなか眠れなかったので、睡眠薬ゾルピデムマイスリー)を追加する。体が温かくなり、そのまま眠りに落ちた。

漢方には、薬を評価する基準として〈上品〉〈中品〉〈下品〉という概念がある。下品は即効性があると同時に薬力が強い薬。上品は即効性はないが、じんわり効く。食事に近い薬であり、毎日、摂取しても深刻な副作用は起きにくい。漢方の概念をそのまま西洋薬学に当てはまるのは、乱暴かもしれないが、近代人は概して、下品な薬を求めがちである。睡眠薬の場合で言えば、強力で即効性があり、翌日、持ち越さない。キレがいい。副作用は一見少ない。資本主義の要求に応えているのである。しかし、私達は効き目の強い薬に精神的、肉体的に依存しやすい。薬力が強いと、強力な〈ユーザー体験〉が与えられるからだ。これは麻薬、覚醒剤を乱用する心理と同じである。処方薬でも十分に発生する。その一線は合法/非合法の違いだけだ。実際、睡眠薬ロヒプノールは、アメリカのいくつかの州では麻薬指定されている。入国時に持ち込むと逮捕されるのだ。

薬と毒は表裏一体である。薬はせいぜい弱っている個人の自己治癒力を高めるにすぎない。結局、治すのは薬ではなく、個人の抵抗力である。薬に頼るのではなく、つねに症状と相談しながら、緊張感をもって服用することで、人生の難関を乗り越えていきたい。