麦芽には栄養がいっぱい

ヘミングウェイの『移動祝祭日』の中で、彼が人に勧められた蒸留酒を断るシーンがある。「僕はビール党なんでね」

夕方、読書や執筆をする時にたいてい片手にビールがある。ワインの時もあるが、ウイスキーはほとんどない。何か活動している時に私は強い蒸留酒はほとんど飲まないのである。

アルコール度数5%.何かをしながら酔うには、ほどよい酒精の強さである。私にとって、ビールは滋味豊富なパンのごときものである。完全栄養食に近い。だから、御飯の代わりにビールを飲むこともしばしばである。私の思考地図マインドマップにおいて、ビールはパン、ワインはジュース、ウイスキーとジンは抗鬱薬ないし睡眠薬という位置づけである。醸造酒はナチュラルだが、蒸留酒はケミカルである。後者は前者から酒精の本質アルケーを蒸留したのだから当然である。化学の起源は錬金術である。理性と狂気の為せる業である。

話が逸れた。この頃の私は肥えている。お腹が出ている。人はふつうアル中になると、栄養失調でガリガリに瘦せてしまうが、私は逆に太っているのである。ただの食べすぎ、飲みすぎである。しかし、これがチューハイやハイボールばかり飲んでいては(けっして嫌いではないが)、私の血と肉、いやいや、脂になりえないだろう。私が順調に肥えてきて、旨そうな中年に成長しているのは、ひとえにビールのお陰なのである。