BOOKMAN

Takashi Kaneko

隠れクリスチャン

日曜日の昼下がりの出来事。開店してまもなく、年輩の女性がカウンターでジンソーダを飲んでいた。先に来ていた常連のお客様と私の会話から、私がそこそこ本を読んでいるのを看取したのか、彼女は私に「普段、どんな本を読んでいるのですか?」と尋ねた。

私はその女性の胸元に十字架の首飾りが光っているのを見て取ったので、少し勇気を出して答えた。

「聖書ですね。特に明治・大正時代に訳された、文語訳は何度読んでも飽きません」

彼女は私の回答で、すべてを理解したようだ。

「今日は本を買いに銀座に来たの」

「本屋でしたら、教文館ですか?」

「教文館も好きだけど、今日は一般書を買うのが目的だったから、交通会館の隣の三省堂に行ってきたのよ」

「そうですか。私は神学書を買いに、よく教文館に行くんですけどね」

グラスが空いたので、私は彼女にカルヴァドスのソーダ割りを作った。彼女は今度、もう少し踏み込んだ質問をした。

「ところで、あなた、洗礼は受けているの?」

「もちろん! 立教大学のチャペルで受洗しました」

「ええ、すごい! 立教の学生って、ほとんどクリスチャンなのかしら?」

「まさか。ごくごく一部ですよ。大部分は俗人です」

いろいろな先入観があったが、私は銀座の酒場バーで、私たちと同じ道を歩む、隠れたるキリスト者に出会えてよかった。

人生の旅路の途中で、キリストの同胞たる兄弟姉妹に会えるのは嬉しく、そして、懐かしい。