BOOKMAN

TAKASHI KANEKO

First Paragraph

本日、初出社。社内のそれぞれの部署の担当者からレクチャーを受けながら、さっそく次の号の原稿を書き始める。

4年ぶりのオフィスワーク。デスクトップ・コンピューターを貸与される。同僚と机を並べて仕事をするのは緊張する。自身のタイピングの音に気を配らなければならない。肉体労働をしていた頃とは違う汗をかいている気がする。加齢臭を発するには私は十分老けている。

新聞記事を書くのは久しぶりだが、編集部の皆と実際に書いていて、驚いたことがある。

文章の行頭を全角スペースで1字下げるのである。ワープロ時代の悪しき慣習である。こういうのは、Wordであれ、LaTeXであれ、InDesignであれ、コンピューターが自動で処理してくれるので、普通は人間が手を加えないのである。もちろん、普段、LaTeXで書き慣れている私にはこのような習慣はないので、ネイティブデータとは別に、入稿用のtxtファイルを用意して、最後に修正するようにしている。段落ごとにポンポンとスペースを打っていくのだ……。

たぶん、会社ではWordで原稿を書いて、それをもとにテキストファイルを生成した方がいいんじゃないかな。その方が正確に文字カウントができるし、校正機能も便利だ。HTMLファイルも生成できるから、紙面の記事をWEBにアップするのも容易だろう。それにしても、入社前はLaTeXで原稿を書く気まんまんだったから、腰を折られた感は否めない。しかし、自由業のライターとはいえ、会社員として、組織の中で仕事をするのは、こういうことだと改めて思った。入社して、編集部の一員として働くためには、自身の流儀を曲げなくてはならないのだ。まあ、それでもゆくゆくは、会社のPCにTeXのシステムを構築するつもりだけど。

そいうことで、会社のオフィスに居るあいだは会社の原稿を必死に書いて、出勤前あるいは帰宅後、自宅の書斎に居るあいだは、今までと同じように自分の原稿を一生懸命書くのであった。すでに分かり切ったことであるが、私は会社の仕事の忙しさにかまけて、自身の仕事を怠るような人間ではない。