BOOKMAN

Takashi Kaneko

バビロンの流れのほとりにて

睡眠薬を飲んでも眠れないので、ジントニックを飲み、『ゴルトベルク変奏曲』を聴きながら、森有正『バビロンの流れのほとりにて』を読んでいる。思えば25歳の頃、私は新聞屋に勤めて、ミニコミ紙を作っていたが、馴れない一人暮らしをしていて、夜、目が覚めると、森有正の著作を読んで、心を静めていた。当時、私はまだ酒を飲む趣味も習慣もなかったが、神経症は静かに進行していたようで、睡眠薬を服用していた。今夜は眠れるだろうか……。そんな不安に襲われる時、読書は私に心の安寧を齎してくれた。

介護福祉分野の仕事が揮わない時、私は再び学生時代とその後に学んだ、新約聖書、森有正、辻邦生、トーマス・マン、ライター・マリア・リルケなどの文学に戻りたいと思う。アルファにしてオメガ。再び原点に帰りたい。

現実が夢に還ってくるというこの過程。パリは僕にこのことを教えてくれた。