〆切近し

出版社に勤めていた頃のことである。昼食後、新橋から築地まで歩く途中、編集者の先輩がひとりごちた。

「そろそろ仕事しないとな」

当時の私は本の紙を選び、発注するような事務職のような仕事をしていたから、先輩のその発言に、自由業の大らかさを見るようでまぶしかった。

私は普段、会社で新聞記事を書く記者をしているが、その傍らで、「塔」という結社に所属し、短歌を書いている。記者としての私と作家としての私は並行しているのだ。

短歌の結社誌ないし同人誌の〆切は毎月20日である。そろそろ弾数(私にとって歌はそういうものである)を増やさないとな。お尻に火がついて、焦れる思いである。