Entries from 2022-01-01 to 1 year

垂直と水平

大将と和解した。酒の力も借りて、わだかまりが解けたような気がする。キリストはみずからを通じて、人に神と和解することを説いたが、人はまず神と和解する前にみずからの隣人となりびとと和解しなければならないのではないか。否、まず神が先だろう。人は…

嗜好品

早番の勤務が終わると、私は休憩室にいる直属の上司Iさんに声をかけた。 「手巻煙草、試してみませんか? 見た目はぶかっこうですが、一本一本、私が手で巻いてきたんです」 「いいよ、一本ちょうだい」 私達はオフィスからベランダに出た。喫煙所になってい…

選ばれし人

情熱冷めやらず。昨夜遅くまで、ファミリーマート西小岩店の軒先で、音楽家と学生、そして異邦人ことくにびとと飲みかつ話した。3時間ほど眠ったあと、顔を洗い、髪を整えて、池袋の立教学院諸聖徒礼拝堂(立教大学チャペル)に出かける。 聖餐式が終わった…

Book of Days

冷静と情熱のあいだ竹野内豊Amazon 昨夜はエンヤの"Book of Days"を肴にしてウイスキーを飲んでいた。同曲は映画『冷静と情熱のあいだ』の主題歌(挿入歌)で、公開当初からずっと気になっていたけど、題名が判らなかった。今回、Amazon Musicで掴んだ形だ。…

力と愛

もっと本を読まなければ、と思う。『聖書』は大事だが、それだけでは創作を支えきれない。観念は重要だが、文学とくに小説は具体的に叙述しなければならない。 研究者と作家。その相違について、本格的に書いてみたいが、まだ機は熟していないようだ。しかし…

荒野の試み

12月1日付で異動することが決まった。役員は環境を変えて、私の勤労意欲を高めようとしているらしいが、課長は知っている。もはや、私を止めることはできない、と。実際は来年度の新卒入社まで頭数を揃えたいんだと思う。会社の懐柔策にまんまと乗ってしまっ…

LondonDryGin

ひと仕事終えて、手持無沙汰にしている私に、H女史はタイピングの手を休めて言った。「そういえば、兼子さんって、何歳でしたっけ?」 「35、今年36歳です。Hさんはたしか……32歳ですよね。2年前の夜勤中に30歳の誕生日を迎えたことを覚えていましたから」 「…

芸術と涜神

小説を書いている。今は大量に書いて、このブログにも習作をばんばんアップしなければならないが、やはり、虚構フィクションを捏造するというのは、精神に独特の負荷がかかるらしく、小説だけでは毎日更新ができないのが現状である。 作家クリエーターとその…

RoutineWork

年末調整をしなければならない。しかし、いっこうにやる気が起きなかったので、ビールを飲みながら片づけた。こんな調子では年度末の確定申告が思いやられる。個人事業主としては完全に赤字である。収入のほとんどを給与所得に頼っている。最近、酒に頼りす…

ブログで稼ぐ

ブログに再び広告を掲載した。フッタにまとめて並べているので、そこを参照されたし。 広告は以前も貼り付けていたのだが、Amazonアソシエイト以外は1円にもならないので、やめてしまった。私が今までブログで稼いだのは、100円未満のほんの雀の涙である。現…

Love and Truth

昨夜、酒場で上司が指摘した、私がかまってちゃんである、という事実について、少し考えてみたい。 かまってちゃんは人からちやほやされたい。私を見てほしい、聞いてほしい、話しかけてほしい、という欲求がある。要するに特別扱いしてほしいのである。ただ…

雌伏と至福

昨夜、竹ノ塚のバーで、上司としこたま飲んだ。 11歳年下の上司なのだが、彼女によると、私は「かまってちゃん」らしい。昨夜も「飲みに行くか」と、彼女の方から声を掛けてくれて、意気投合した。「金づるゲットー!」と冗談交じりに言っていたが、そこは「…

ショートスリーパーの苦悩

すがすがしい朝。ウイスキーを飲む。会社の仕事は午後から始まるので、それまでに醒めていればいい、という計算である。 最近は抗精神病薬 アリピプラゾールが身体に馴染んできたのか、コンスタントに5時間くらい眠れるようになった。それでもやはり、長く眠…

鼓動

トントン。トントン。 嗜眠から醒めつつあるとき、誰かがドアを敲く音がする。 トントン。トントン。「……いるか?」 どうやら話しかけられているらしい。しかし、意識が回復しないので、うまく応えることができない。 トントン。トントン。「佐藤、いるか? …

科学から空想へ

今、私の居間兼寝室には、二人の酔漢が寝息をたてて眠っている。こう書くと、さまざまな方面で、心配されたり、呆れられたりするだろうが、私の実生活というのは案外単純なものである。会社に勤めたり、酒場で過ごしたり、下宿で友達と酒杯を片手に芸術論を…

炬燵の資本論

居間に炬燵こたつを敷いた。およそ5年ぶりのことである。私が幼少の頃、私たち家族は、椅子と食卓テーブルで暮らしていた。80年代から90年代のことである。一方、居間には卓袱台ちゃぶだいらしきものがあり、そこに座布団を敷いていたが、食事の際はいつも、…

TankaWriter

最近、短歌を詠んで(読んで)いない。 文章を書く量、アウトプットの総量は増大しているし、毎日、文語訳『聖書』を読んで、以前に比べて、古語に慣れているのに、それでも書けない(書かない)。 してみると、短歌が私にとって本当にふさわしい文芸なのか…

言葉の抽斗

中村真一郎は作家になりたいと公言したとき、彼の叔父は次のように助言した。「君が作家になりたければ、机の抽斗ひきだしいっぱいに原稿を書き溜めなければならない」 また、ある先輩作家は次のように話した。「君が作家デビューを果たす頃には、ミカン箱一…

社会の再生

18時に布団に入り、21時に布団から出る。仮眠としては少し寝すぎたくらいだ。近所の自動販売機でMONSTERを買い、ぐびりと一杯やる。昨今、エナジードリンクについてはいろいろと言われているが、起きがけの清涼飲料水はなかなかいいものだ。 昨夜、福音よき…

シガレットの色気

煙草を嗜んで、3年が過ぎた。初めて吸った紙巻はHOPEで、会社帰りの終電を逃した時、北千住の歩道橋で夜のビル群を眺めながら一服したのであった。その後、パイプに手を出すまで、1年とかからなかった。 確かに、私は愛煙家には違いないが、ヘビースモーカー…

HandWriting

過労気味である。週5日、施設で介護をやり、残りの1日、2日に訪問介護をぶち込んだのがいけなかった。夜勤さえなければ大丈夫だろうと高をくくったが良くなかったのである。 思えば、介護に限らず、新聞屋でミニコミ紙のライターを週6日、7日、ぶっ通しで働…

世を愛し世を憎む

『聖書』の四つの『福音書』のうちで、私は圧倒的に『ヨハネ伝福音書』が好きである。次の一節を読むと、私は静謐な喜びを覚える。 それ神はその獨子を賜ふほどに世を愛し給へり、すべて彼を信ずる者の亡びずして、永遠の生命を得んためなり。神その子を世に…

わたしとぼくのゲーム理論

「少し、席を外そうか」 別室に移動すると、私はポケットから退職届を取り出し、テーブルの上に置いた。一瞬、上司は嫌な顔をした。 「行動があまりに衝動的すぎますよね」そして、続けた。「先日、話し合いをしたばかりなのに」 「**さんには不義理を働い…

否定の意志

退職届を書いた。 これを今日、上司に提出すれば、来年の私の生活は一変すると言っても過言ではない。 4年間勤め上げた会社だが、今では一介のアルバイトに過ぎない。決意、と言っても大げさかもしれないが、私のささやかなそれは退職ではなくて、来年の仕事…

ものごころ憑きし頃

私に正確な古文の知識はない。しかし、「ものごころ」が昂じると、やがて「ものぐるおし」という感情になると思う。本当に物に狂っているのである。 物には人を狂わせる魔力がある。本、酒、女、煙草、文具……そういう奢侈品、嗜好品に私は今まで狂ってきた。…

転職に次ぐ天職

鬱である。 このままだと会社と取り決めた、年度末まで勤め上げるのが難しくなるかもしれない。このまま無理に働いても、休職になるのがオチである。しかも、持病を悪化させるという代償もともなう。それならば、さっさと介護の仕事から足を洗ってしまって、…

幸運ヲ祈ル

「あなたは大学を出ているのに、それを少しも鼻にかけない。あなたは真面目に仕事をしている」 昨日、お客さんに言われた言葉だが、これに先立って、こんな会話のやり取りがあった。 「**さん、私、もうすぐこの仕事を辞めてしまいます。もと居た出版に帰…

文筆と活動

以前、勤めていた所のお客さんから手紙をもらった。異動する時の去り際に、私から手紙を寄せて、だいぶ日にちが経つので、もはや返事は期待していなかったのだが、昨夜、郵便受けを開けてみると、一通の葉書が入っていたので、望外の喜びである。 昔、出版社…

大隈を見ゆ

昨夜、友人と酒を酌みながら話していると、彼の目の下に黒々とした隈があることに気づいた。 「目の下に大きな隈があるよ」 「そんな馬鹿な」彼は携帯電話のインカメラを起動して、自身の顔を覗いた。「本当だ。普段、あんまり隈とかできないんだけどな」 「…

燃えつき症候群

昔、ハローワークの職業訓練で、介護初任者研修を受講したとき、講義の最初の方で印象に残ったことがある。 燃えつき症候群——。医療職、福祉職に多いとされる。感情労働がメインのやりがいのある仕事を身を粉にして、延々と取り組んだ結果、当人が燃え尽きた…